TAEのまちづくり

たまプラーザ駅周辺地区開発

駅をまちにひらく。緑豊かな田園都市のモデルケース

「プラーザ」にふさわしい地域拠点の創出
―たまプラーザテラス

本エリアは、東急電鉄(※1)が半世紀以上にわたって手がけてきた多摩田園都市まちづくりの中核に位置付けられる。その名に込められた「プラーザ(広場)」中心のまちづくりが行われてきた。自然に恵まれた豊かな環境(田園)と都市機能をあわせ持つ、郊外住宅地らしいゆとりのある良質なまちづくりが一貫して継承され、開放的な街並みや並木道、住む人々のライフスタイルそのものが街を形成していたといえる。「たまプラーザテラス」は、約3.8haの敷地を、ゆとりのある上質なまちづくりのDNAを継承し、「プラーザ」にふさわしい地域拠点とすることが求められた。かつての駅周辺は、南側は住居系用途地域のままであったため、北側に比べて開発が大きく進まず、逆に開発が進んでいる北側は、駐車場不足なども起因し道路が混雑する状況も見受けられた。長い時間をかけ地域住民とともに将来のまちづくりのあり方について協議を重ね、地区計画および用途地域の変更が実現した。線路によって分断され、地形上高低差があった南北間に約3.0haの人工的な地盤を構築し、街をひとつに繋げることを可能にした。人工地盤の下に2つの交通広場と地下駐車場を設け交通結節機能を内包させ、人工地盤の上には駅を中心とした全方位の歩行者ネットワークを構築。街を繋ぎ人が集う広場、低層で分節化された街に滲み出すにぎわい商業施設(たまプラーザテラス)により都市機能整備が整い、街の成熟に寄与している。

次世代の「郊外らしい」まちづくり

1966年田園地帯に鉄道が開通し土地の造成が始まり、1974年頃には駅北側に団地が建ち並ぶ。同じく駅北側に1982年竣工の「たまプラーザ東急ショッピングセンター」が開業し郊外型商業施設として地域に溶け込んだ。東急田園都市線を代表する駅前であったが、駅南側は住居系用途地域に指定され、低利用や暫定利用の土地利用が続いていた。1986年、地元地権者と東急電鉄による「たまプラーザ地区計画推進連絡協議会」が発足し、将来のまちづくりのあり方についての検討が開始された。その後、横浜市との協議を経て2002年に用途地域の変更と地区計画(街づくり方針)が決定し、駅周辺地区のまちづくりがスタートした。その中核をなす「たまプラーザ テラス」は、「協議会」の発足から足掛け25年後の2010年開業。さらに2013年には、駅南側に「たまプラーザテラス リンクプラザ」「ドレッセ たまプラーザテラス」が竣工。横浜市と東急電鉄による官民連携の取り組みである「次世代郊外まちづくり」の第1号モデル地区となったたまプラーザ地区で、人口減少社会・高齢社会の課題を迎える郊外住宅地とコミュニティの持続・再生を目指していく。
※1:現在の東急、東急電鉄

基盤整備

線路を挟んで南北の高低差を人工地盤で覆い、駅を取り囲むように低層商業施設を配置し広場やまちへの動線を計画。各街区に繋がる道路上空歩行者デッキ通路によって歩車分離を実現している。人工地盤下部に設けられた北側交通広場及び南側交通広場は、各方面への路線バス・タクシー・送迎の寄り付きなど、交通結節点としての機能を確保しつつ安全な利用を可能とした。都市機能を強化する地下化した駐車場や交通広場によって、周辺環境との調和がとれた地上部の低層建築群が新しい街並みを形成している。

利用者に驚きを与える、自然光あふれる大屋根

たまプラーザの新しい顔ともいえる、ホームから約30m上空にかかる大屋根。車窓からも賑わいを感じられるようにコンコースをミニマム化し、大屋根と一体的な吹き抜けの明るく開放的な大空間を形成している。これにより通過する鉄道利用者に驚きをあたえ、ぐるり360°の見通しにより様々なスカイラインの低層商業建築群を一望でき、立ち寄る動機となる空間を目指した。同時にホーム階の閉塞感を緩和、夏季のホーム階の熱溜まりを解消。また大屋根トップライトと側面ルーバー兼ガラリの採用により昼光利用とタイマー・センサー制御した人工照明による照明負荷削減などの環境配慮を図るとともに、火災発生時の蓄煙・排煙機能などの防災機能も併せ持つ。街に存分に開かれた新しい駅となった。

駅を取り囲む個性的で魅力あふれる施設計画

駅を中心に高い回遊性を狙って配置された低層建築群は、個性的でありながら緑豊かな街並みに調和するデザイン。吹抜けを設けた開放的なコリドーや広場を中心とした様々な発見のある滞在性の高いライフスタイル・コミュニティ・センターとして計画。賑わい施設とともに、保育所や学童保育など子育て支援施設、地域情報発信のサテライトスタジオやコミュニティホール、地域ケアプラザやデイサービス、クリニックなど地域の人々が持つライフスタイルへのこだわりに応え、生活の質の向上に寄与する地域拠点となっている。