ワークショップ まちつむぎ/ TAE、次の50年

「若手が考える、これからのTAEのまちづくり」をテーマにワークショップを開催。
参加メンバーは所属を超えた10名。AチームとBチームに分かれ、目指すべきまちづくりについて意見を交わし、
見識を深めた。4月に50周年を迎えたTAE。
若い社員たちは、次の50年をどう描いたのか。 2022年10月開催

agenda01

どんな街に暮らしたいだろう?

頭と場のウォームアップとして、まず街についての課題をユーザー視点で顕在化させるワークからスタート。

何かのきっかけを持つ街

まだ緊張感のある中ではじまったワークショップ。「おいしいお店が多い街」とか「私は便利な街じゃないとダメかな」など身近なことから、徐々に打ち解けながら進んでいく。話が少しずつ深まっていく中、「コンセプトのある街」という意見が共感を集める。目指す方向が明確であることで街の独自性が生まれ、集まる人が多様になるという。そこから刺激を受け、視野や世界が広がっていく。皆、様々な世界へのきっかけを求めているようだ。「家族と会いやすい街」と書いたのは、地方出張が多いリゾート案件の担当者。コロナ禍で家族や友人とのかかわりを改めて考えたという。その意見に、多くのメンバーも人の繋がりやコミュニティを構築していくことの重要性を思う。

1チームは、テーブルファシリテーターを含む6名で構成。

『交通のよさが、にぎわいを呼ぶ街』

「交通の便がいい街」という意見も同意を集めた。これは、単に自分にとっての便利・不便の話ではなく、良好な交通利便により「人々のフットワークが軽くなる=街がにぎわう」という好循環が生まれるとの指摘。まちづくりを仕事にする者としての視点だ。また「自然が豊かなところ」という意見も出る。自然が多い地域に住みたいと引っ越してみたら夜が暗すぎ出歩けなくなったという参加者は、自然の豊かさもある程度管理された自然(ランドスケープ)が望ましいのではと話した。

  • 閃いたアイディアは付せんに書いて模造紙に貼っていく。
agenda02

仕事を通じて、
街にもたらした影響や変化は?

自分たちがかかわった仕事を振り返りながら、目指すべきまちづくりのヒントを探してみる。

『街に集う人に、
あたらしい喜びを提供できた』

グランベリーパークを担当したメンバーは、オープン時、「ここはディズニーランド?」と錯覚するほどのにぎわいだったと振り返る。施設全体がウォーカブルな公園のような設計で、街に集まる人にとって、新しい動線が新鮮なおもしろさに繋がったのではと話す。ある建築担当者は団地リノベーションコンペに入選した経験から、ある程度使い手にゆだねる計画とし、よりフィットする住まいを提供できたという。遊びのない計画は、どうしても使い手が窮屈な状況になる。その中で「ゆるく規制する」という手法を選んだのだ。

議論が白熱すると、無意識に立ち上がる姿も。

『私たちの仕事は、街の起爆剤』

渋谷ストリームを担当したメンバーは、地元の高齢者の方が懐かしそうに「ここは昔、きれいな川だった」と、渋谷川の再生と新たなにぎわいを喜ぶ姿が印象的だったと語る。長らく渋谷の裏と呼ばれていた南側エリアを開発したとき話だ。他のメンバーからも、かかわった開発で街に新しい動線が増えた結果、その動線に紐づくように次々とユニークな店ができ、開発の影響が街全体に波及していく様子を目の当たりにしたという話があった。設計という仕事は、街を活性化させる原動力になれる、と感じられるエピソードだ。

  • 模造紙を壁に貼り、多数でた意見を俯瞰的に捉える。
agenda03

これから街をよりよくしていくために
必要なものは?

書き出されたアイディアをマップ上で分類・整理。TAEが目指すべきまちづくりに迫っていく。

A TEAM IDEA

その土地の個性を活かす“きっかけ”を見出す

これからのまちづくりに必要となってくるのは、それぞれの街が持つ特徴や役割に着目し、持続的な発展が可能となる様々な「きっかけ」を見出したり、つくり出すことではないか。きっかけとは例えば、地域の歴史や文化にヒントがあるかもしれないし、このワークショプのような会議体かもしれない。きっかけを起点に、所与のものに改良を重ね、優れた機能を付加して、環境への負担をできるだけかけずに街の発展に貢献する。地域にふさわしい「きっかけ」のタネを撒くことで、植物が枝葉を広げていくような持続的発展を見込めるようになる。それがさらに周辺エリアの発展の「きっかけ」になる可能性もあるはずだ。

Aチームでは、まちづくりに必要な「きっかけ」を考察した。
  • Aチームの発表の様子。
  • 自然と笑顔にも熱がこもる。
  • 提案の際はスケッチブックを活用した。
B TEAM IDEA

「余白」と「事業性」を両立させる計画・設計

agenda2で「ゆるく規制する」という建築の手法を聞いた土木・まちづくり室メンバーから、街を計画・設計する場合でも使い手がカスタムする「余白」をつくり出すことでより愛着の持てる街ができるのではという意見が出る。この考えを軸にBチームの案はまとまっていく。街という舞台の主役は生活者たちだ。彼らに愛着を持ってもらうため、設計者は余白(公園や新たな空間など)を入れ込み、訪れてみたい・住んでみたい街をつくろうと考える。それには、単に空間を設計するだけでなく、開発する事業者の立場に立ち事業性との両立を考えることが不可欠だ。私たちにもそんなチャレンジが必要ではないか。それは異業種とのコラボレーションまで視野に入れた、TAEの新しい扉を開く活動になるだろう。

Bチームでは、「余白」の重要性に着眼して提案をまとめた。
  • 制限時間内で意見をまとめるのは大変。
  • Bチームの発表の様子。
  • これからの業務に繋がる手ごたえを実感。
WORK SHOP summary

若手が考える、
これからのTAEのまちづくり

3時間近くに及んだ及んだワークショップの成果をプレゼンテーション。

A TEAM PROPOSAL

豊かなまちづくりの連鎖を生む「TAnE(タネ)づくり」

Aチームは、考えを「TAnE(タネ)づくり」というワードに集約しました(TAnEとは、当社の英名の頭文字「TAE」と「種」をかけ合わせた造語)。これからのTAEには、従来のまちづくりだけではなく、“きっかけ”のTAnE(タネ)をつくっていくことが重要だと考えています。にぎわいのきっかけ、コミュニティのきっかけ、SDGsへのきっかけ…。街に様々な“きっかけ”のタネを蒔き、それぞれの街の特性を活かし、個性を磨きながら育て、発展させていく。私たちがまちづくりで蒔いたタネは、街で成熟し花を咲かせ、またタネを別の場所に飛ばします。隣町へ、さらに遠く地方の街にも運ばれるでしょう。「TAnEづくり」の狙いは、豊かなまちづくりの連鎖です。TAnEから、私たちはどんな花を咲かせることができるのか。考えるだけでワクワクしてきます。

《感想》
違う部門や部署の人と議論することは新鮮な体験でした。一緒に考えることによって、とてもひとりではたどり着けない場所にたどり着いた感じがあります。このような取り組みを日常業務でもできれば、新しい変化をつくり出せるように思いました。

(左から)
山本 雄太 都市・土木本部(テーブルファシリテーター)

塩原 緑  建築設計本部
広沢 望  都市・土木本部
伊藤 駿  建築設計本部
辰己 祐輔 建築設計本部
B TEAM PROPOSAL

都市・建築の“余白”を実現させる「ソフト研究室」

時代は変化する。その変化を柔軟に受け止められる「余白」を設計することが、都市・建築に重要と考えます。ただ、余白をつくろうとした場合、やはり事業性が壁(お金を生まないということ)になります。そこで新たに余白の活用方法をプランニングする「ソフト研究室」を組織化するのはどうか。TAEの強みの「都市・建築・土木のワンパッケージ」に加え、あらかじめ事業性を考慮した余白とソフト企画を提案することで、実現性を高められるのではないかと考えました。生活者に“まち愛”を持ってもらうためには、ハード面を超えたソフト面での提案力が不可欠です。完成後の街への提案力・創造力を持つことで、TAEのまちづくりパッケージは無限に拡大できる。この新しいパッケージの展開で、TAEの次の50年はさらにおもしろい時代にできると思います。

《感想》
組織外の人の仕事に目を向けることの大切さを再確認させられるワークショップでした。ちょっと違う視点を取り込めるようになれば、目の前の仕事にさらに興味とやりがいをもって取り組めると感じました。

(左から)
今井 久美子 建築設計本部(テーブルファシリテーター)
早瀬 明日香 建築設計本部
平井 良拓  建築設計本部
清水 柾考  都市・土木本部
笹沢 果菜  都市・土木本部
扇芝 孝誠  建築設計本部
総括

ワークショップを振り返って
ワークショップ企画者/統括ファシリテーター 今井久美子

若手社員たちが、いま何を考えながら仕事に取り組んでいるかを伝えたい。そんな思いからワークショップの企画がスタートしました。しかしプログラムの設計が難航、不安な中でのスタートでしたが、そんな不安が吹き飛んでしまうほどの活発な意見交換が行われました。印象的だったのは、コロナの影響もあり、部門間の交流がかなり少なくなってしまっていたこと。このワークショップは、互いの考え方の違いへの気づき、新たなコミュニケーションが生まれる貴重な機会になりました。業務以外の一面を知ることができたのもとてもよい刺激となったように感じました。忙しい業務の合間を縫って集まっていただいた参加者への感謝とともに、社員間の関係性を密に保つことの重要性、仕事以外のコミュニケーションの場を持つことの大切さを感じた一日でした。

ワークショップ企画・運営メンバー