TAEのまちづくり

渋谷駅周辺再開発

実現不可能ともいわれた「100年に一度」の壮大な事業

グローバル都市である渋谷は、100年以上にわたり東急グループの最重要拠点であり、まちづくりの象徴でもある。その窓口となる渋谷駅は4社9線の鉄道路線が直結する世界有数の巨大ターミナル。しかし、かつての駅施設は明治時代から繰り返された増改築により「ダンジョン(地下迷宮)」と称される複雑かつ重層的な配置、さらにその中を暗渠化された渋谷川が流れるという立体パズルのような構造になっていた。渋谷駅施設と周辺建物の多くが1981年以前の耐震基準改正以前に建築されていることから、安全性や防災性の向上、バリアフリー化が求められ、また渋谷川が形成する地形から浸水・冠水被害を受けやすいという課題、安全で快適な歩行者空間の確保、自動車交通の混雑緩和などいくつもの問題を抱えていた。

渋谷再開発のきっかけとなったのは、東京メトロ副都心線と東急東横線の相互直通運転化である。2002年、渋谷駅から代官山駅にかけて地下化が決まり、渋谷駅南側に広大なスペースが生まれることから大規模開発が加速する。2005年には渋谷駅周辺が国や東京都の「都市再生緊急整備地域」に指定され、特例措置を活かした自由度の高い再開発事業が可能になった。続く2010年には「渋谷駅中心地区まちづくり指針2010」が策定。これにより街の強みを活かして課題を克服する、渋谷の価値を相乗的に高める100年に一度の未曽有の再開発が可能となった。

そしていま、TAEのまちづくりは、渋谷駅を中心に代官山や代々木公園へと広がりを見せつつある。

基盤整備

渋谷駅は、各鉄道会社がすり鉢状の谷底で開発を重ねたことにより利用者の利便性を無視した複雑な構造となっていた。そこで鉄道施設や幹線道路などで分断された街を繋ぐ歩行者デッキと地下空間を繋ぐ地下通路を設置、縦動線としてのアーバン・コアと合わせて街の回遊性を向上。さらに東京メトロ銀座線のホーム移設やJR埼京線ホームの移設など、鉄道乗り換えの改善を実現した。また渋谷駅中心地区はその地形特質から地震や集中豪雨への対策が重要課題であり、インフラの脆弱性を克服する必要があったため、浸水対策として渋谷駅東口広場の地下に約4,000トンの雨水貯留施設を整備した。

縦横の回遊性の向上を示すイメージ図

渋谷川環境整備

水源がなく川底が見え水たまりが散見された川に下水処理場で高度処理された清流復活水を導水し、稲荷橋~金王橋の60m区間にわたる護岸から水景施設としての「壁泉」から放流した。この壁泉により水流を復活させ河川の景観を向上させるのみならず、元来からの課題であった臭いや虫発生を低減させ環境改善をした。既存橋に隣接し広幅橋を架橋し、「まちのゲートとなる広場」と「まちのシンボルとなる広場」の2つの広場を整備。川と一体の水を感じられる広場空間となり、地元の祭りやイベントに活用され、まちの顔・シンボルとして機能している。さらに普遍的なおわん型の護岸形状であった河川の一部に緩傾斜護岸として環境空間を整備することで川との一体感を創出した。

渋谷川は鉄道との関係が深い。東急東横線が地下化されるまでは、河川脇に鉄道高架橋があり、渋谷川の景色を構成していた。戦前までは並木橋脇に並木橋駅も存在していた。鉄道との関係を後世に残すべく、河川脇の空間の端々に鉄道の歴史を意識できる高架橋柱やレール、電路柱などの施設を配置。並木橋駅跡にはプラットホーム形状も再現した。連続する河川環境の改善により、再生都市河川により川をまちの表舞台とし、代官山方向に繋がるまちのネットワーク構築を行った。