竣工DRの結果について
当社の建築設計本部では、その年に竣工した建築物を対象にデザインレビューを実施しており、そこで高く評価された作品を表彰しています。
毎年実施しているこの社内イベントは、「竣工DR」と呼ばれており、社員のモチベーションアップや品質向上につながっている取り組みの1つです。
2023年度 竣工DRの表彰作品が決定しましたので、お知らせいたします。
金賞(2作品同点受賞)
基本情報
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町
主要用途:ホテル
建築主:東急不動産株式会社
竣工日:2023年7月31日
施工会社:北野建設株式会社
延床面積:敷地A:2116.84㎡
敷地B:2875.57㎡
構造:敷地A:鉄骨造、鉄筋コンクリート造、木造
敷地B:鉄筋コンクリート造
階数:敷地A:地上2階
敷地B:地上2階
作品概要
軽井沢の中でも自然豊かなアクティビティを満喫できるエリアに建つ、ふたつの“隠れ家”をコンセプトとしたホテル。
当施設は二つの計画敷地にあり、それぞれが独立し、敷地ごとに完結した計画としながらも、統一感のある施設を目指した。
谷戸に囲われた個性的な地形、木々に囲まれたプライベート感のある立地から、隠れ家を意味するRetreatをコンセプトとし、自然に寄り添う施設の中で楽しむバリエーション豊かな施設構成を目指した計画としている。
塩沢湖に続くせせらぎに寄り添う小川、水流のイメージからcreek、森の中の独立感あふれる戸建スタイルイメージからgardenのふたつの“隠れ家”を作り出した。
全体構成として、隣地にある既存の軽井沢&VIALAと本計画の間の領域を中庭としてとらえ、中庭に向けて両施設の共用部が面する配棟とすることにより、施設間の連続性を表現している。
客室の配棟を、主に敷地外周に向け眺望やプライバシーを確保することにより、谷戸による結界性を利用した施設間のプライベート性と、二つの施設の連続性の両面を実現させた。
客室は、光と風が抜けること、外と内のつながりを大切にすることにより、戸建らしさを表現、それらの「あいまいな領域」を施設全体としても大切にすることにより、自然の中での施設構成、建物と外部、ランドスケープとの繋がりを表現している。
車寄せからエントランスへはアプローチを低く設え、落ち着いたプライベート感からロビー空間への広がり、中庭への抜け感の効果を狙っている。
外観デザインは、平面的に広がる敷地の中に木立の立ち並ぶ既存環境をイメージし、木々の活き活きとした垂直性と、水平性のある伸びやかな建物のシルエットとの対比を表現している。
水平性を大切に、二つの敷地全体としてもつながりを感じられるデザインとすることにより、多種の構造、ボリュームの異なる建物に統一感を持たせた。
外観の素材は、コンクリートや金属などの無機質と自然素材との対比により洗練されたデザインを目指した。
伐採した既存樹木を使用してバードハウスを製作し、鳥たちが戻ってくるような施設、人にも環境にも優しいホテルになるよう気持ちを込めた施設を作った。
受賞を受けて一言
素晴らしい竣工プロジェクトがたくさんあるなかで、金賞を受賞することができ大変うれしく思います。設計から監理にかけて様々な検討事項がありましたが、事業主様、施工者様はじめ関係者の皆で作っていった本当に思い出深い施設です。
監理段階においては、設計時からのコンセプトを大切に、ディテールにこだわって作り上げていきました。
いくつかのパターンでのコンクリート化粧打放仕上や、木造のディテール、勾配屋根のとりあいなど、おさまりが大変な工事を、職人さん含め皆さんが本当に協力してくださり、一つのものができていきました。
また、大切にしたいポイントであった、建築とランドスケープとの関係性が、とてもよい相互関係を持って表現できたと感じております。
皆様にもぜひご覧いただき、軽井沢の素晴らしい環境で過ごしていただければと思います。
金賞(2作品同点受賞)
基本情報
所在地:東京都渋谷区
主要用途:商業、オフィス、ホテル
建築主:株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス他
竣工日:2023年3月31日
施工会社:株式会社熊谷組 首都圏支店
延床面積:41,766.92㎡
構造:鉄骨造一部鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造
階数:地上27階/地下2階
作品概要
本計画は渋谷文化村通りに接する敷地における、ホテル、オフィス、商業による大規模複合施設である。接道が限られた複雑な形状の敷地に対し土地区画整理事業を用い、道路新設及び拡幅を行うことで事業性の最大化を目指した。
渋谷の都市空間の成り立ちを分析する中で、谷筋に賑わいの軸となる大通りが引かれ、台地には高低差を跨ぐように路地空間が現れ界隈性を帯びていることに着目し、本計画にも渋谷の都市の2面性を表現することを試みた。
接道が限られた敷地においては人々を引き込むこと、周辺の公道と一体となった回遊性を実現することが重要と考え、「道を通す」を計画コンセプトとするとともに、渋谷の特徴である谷と台地の2つの空間を併せ持った計画を目指した。
また、従前に存在した擁壁や斜面を切り拓くようにして道を通す文脈から地形を想起させる形態操作や素材をデザインコンセプトとしている。
受賞を受けて一言
始動から約10年間に及ぶプロジェクトですが、社内外含め多くの方の助力なくしてなしえなかったプロジェクトであったと感じており、関わって下さった方々に感謝を伝えたいです。
長期にわたるプロジェクトの最後にこのような評価を頂いたことを非常に嬉しく思います。
今後、本計画が渋谷カルチャーを受けてどのような場として定着していくか楽しみにしております。
銅賞
基本情報
所在地:東京都渋谷区
主要用途:共同住宅(賃貸)・飲食店
建築主:個人
竣工日:2023年11月10日
施工会社:東急建設株式会社
延床面積:1888.71㎡
構造:RC造
階数:10F
作品概要
代官山駅と恵比寿駅の中間部に位置した大通り沿いに建つ賃貸住宅。
代官山・恵比寿という場の求心力をもつ両駅に呼応する敷地を基点としたもう一つの小さな磁場の形成を目指した。
敷地が2面接道されている立地特性やペルソナに配慮し、プランニングにおけるそれぞれの境界間の「際」に対する関係性に注力した。
周辺の環境を丁寧に読み込むことで住戸の向きを決め、ここで育まれるそれぞれの生活の表情がファサードを形成する外観計画とした。外装にはコンクリート、天然木等の自然素材をこの土地の環境に応答するようにきめ細かくデザインし、街並みの中で「際立つ」佇まいとした。足元周りの外壁をセットバックし歩道に新たな広がりをつくるなど、各所の「際」を調停することで建築と人の関わりやすさも生みだした。
住戸内では多様な生活の場のつながりを重視し、引戸に改めて着目した。引戸による曖昧な「際」をもつプランはここで暮らす人々のイマジネーションを刺激する。
このように、様々な人々が建築に関わることでこのまちが新たな求心力を育み、それらが拡がる風景に期待したい。
受賞を受けて一言
大通り沿いに建つ立地でもあったため、建築の佇まいについてはとても緊張感がありました。あらゆる視点から建物の全景が確認できるためファサードの立面の構成、素材感との取り合いは特に意識してまとめました。本物件ではお施主さまが個人であったこと、弊社としては比較的に規模が小さいこと、外観は打放仕上という稀有な物件でもあったためか関係者との会話、関わり方が普段の現場とは異なりました。自らコンクリート打設にも携わらせていただき、職人の方々ともコミュニケーションを密にしたとても印象深い経験をさせていただきました。施主、管理会社、設計者、施工者、職人などの立場というものは関係なく、とにかく全員が「品格のある良い建築」をつくるという意識のもとでぶつかることもありましたが、様々な思いや熱意が結晶となって完成した物件だと思います。仮囲いが全て外れた時はこのまちの新たな基点になりそうな佇まいになったと確信しました。最終的にはみなさまの多大なるご協力のもと作品賞(銅賞)、プレゼンテーション賞を受賞できましたことを心より感謝いたします。